5月 26, 2023 | 天主閣便り

05月号 Vol.327【動じない歩み】

Written by 藤浪義孝牧師

先月北海道に「国民保護に関する情報」が発令された二日後、官房長官が弾道ミサイルなどの迎撃に備えた「破壊処置準備命令」を出し、北朝鮮衛星打ち上げに強い対応を示唆しました。今回の警戒警報は、5年前のハワイ緊急誤報令を思い起こすものでした。実際に核兵器が使用される可能性は低いとされていますが、核の脅威は高まっており、もし使用されれば、壊滅的な被害をもたらします。それだけに、緊急警報が発令される度に人々は動転してしまいます。

ハワイ住民は、5年前の警戒誤報でパニックを体験しました。その日、警報発令から誤報であるこが住民に伝えられるまで実に38分かかりました。パニック状態の1分間は、途轍もなく長く感じるものです。政府に怒りをぶつけた住民の気持ちがわかります。ちょうど良いタイミングで映画「20分」が上映されました。5年前の誤報令をもとに制作されたこの映画は、弾道ミサイルがハワイ州を20分後に直撃するとの警報発令から始まります。突然の事態に異なる価値観の人たちが同じ心の痛みを経験し、秒読み開始までのわずかな時間に繰り広げられる住民の心の変化や行動が現実味を帯びて描かれていました。

そして「なぜ善良な人にこのような悲劇が起きるのか。」

この難問に対する応答で終わります。過去や現在の一連の事態に考えさせられます。現代は昔よりも適応力が重要視されています。その場その場で現実的な対応をすることが求められています。

ところが、どんなに適応力があって柔軟性に優れていても、何の原則や土台もないものであったら、その時その時に思いついたまま行動してしまうでしょう。かえって混乱を起こしかねません。しっかりした土台を持っている人は幸いな人です。聖書の一巻「サムエル記」に登場するサウロは、正しい原則を持っていない人でした。「あの人物さえ、いなければ」と自分よりも出来のいい人を気にする人でした。その結果、王としての本来の仕事さえ手につかなくなりました。宮殿でサウロ王に仕えていたダビデという青年がいました。

「あの人物さえ、いなければ」と自分よりも出来のいい人を気にする人でした。その結果、王としての本来の仕事さえ手につかなくなりました。宮殿でサウロ王に仕えていたダビデという青年がいました。ダビデは、正しい原則を持っていた人でした。人々から愛されました。戦争に行くたびに勝利を収めていたので、王の家族からも部下からも尊敬され、女性たちには人気者になりました。優秀な部下がいることは王にとって大きな力になりが、サウロ王の嫉妬はどんどん大きくなり、ついに狂気を帯びてきたのです。いつも自分のことばかり考えていたので、ダビデの手柄への人々の声援を誤解し、ダビデと比較されているのだと思い込み、自分の息子の親友であることを知りつつも暗殺を企てます。聖書に「はじめに、神が天と地を創造された。」(創世記1章1節)と示されているように、人として自分は神の前にどうあるべきかという土台にしっかりと立つことは大切なことです。これを見失うことは、軸のない車輪のようです。
聖書に「はじめに、神が天と地を創造された。」(創世記1章1節)と示されているように、人として自分は神の前にどうあるべきかという土台にしっかりと立つことは大切なことです。これを見失うことは、軸のない車輪のようです。適用力に優れていても、周りの状況に揺り動かされて思いついたまま行動してしまいます。サウロは、神の国イスラエルの王として立てられた人でした。彼に一番求められていたのは、いかに神に愛され、いかに王として神を愛し、神の御心を知りそれを実現するかということでした。ところが、自分は神の前にどうであるべきかという視点を失ってしまったために、自分はどれだけ人気があるかということにこだわったのです。
極端な例かもしれませんが、核弾頭ミサイルがあと20分でこの島を直撃すると発令を受けたら、私たちはどう行動するでしょうか。

 

「今月の言葉」

過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないことである。(アインシュタイン、理論物理学者、ノーベル物理学賞受賞 / 1879~1955)

今月の証
「希望の神」
Written by 井上由美子

まず初めに、私を温かく迎えサポートしてくださったマキキキリスト教会の皆様に心から感謝します。

私が初めてイエスさまのことを知ったのは小学校低学年位だったかと思います。両親の仕事の都合で、私はクリスチャンの叔母の家でよく過ごしていました。教会に通っていた記憶はあるものの、その後いつの間にか教会から離れ金融系の会社に就職し、朝から深夜まで仕事に夢中になっていました。そこへ2011年3月東日本大震災が起こりました。神奈川県に住む私は毎日続く余震と原発情報の中で、ふとこれで死んでしまったら何か大事なことを知らないような気がしました。そしてこれを機に日本に住む外国の方を助ける仕事をしたいと思い、その準備をしている中で今の夫に出会いました。

ある日私たちは夫のクリスチャン叔母夫婦に会いに行きました。日系人の旦那さんは重い病気の闘病中にも関わらず、二人の間にある空気は安らかで素敵なご夫婦だなと思ったものの、この時点ではまだなぜ神さまが大事なのかは理解できていませんでした。真面目に神さまのことを知ろうとせずグズグズしている私に夫は「明日死んだらどうするのさ!早く神を信じるところまで来てくれ!」とイラつき、私も「私は私のペースで神さまのことを知ろうとしてんだからせかさないで!」「私はそんなすぐには死なないし放っておいてよ!」と当時はこんな喧嘩をたくさんしていました。そうしていつものように神さまのことや教会のことで言い争いをしている時、夫が「わたしは神だ。と言ったのは神だけなんだよ!」と言いました。

どうか、希望の神が、信仰によるすべての喜びと平安であなたがたを満たし、聖霊の力によって希望にあふれさせてくだいますように。
(ローマ人への手紙15章13節)

その時、あれ? 人間が自分達の都合のために作り上げた神様や偶像は神じゃないのかもしれない……。

と気づき、言い返そうとしても何も言葉が出てきませんでした。さらに夫は毎日真剣に神さまに祈り、悪い心や習慣を変え、人を赦し愛そうと日々戦っていました。実際、アグレッシブだった彼はどんどん変わっていきました。その姿を目の当たりにし、人を変えられるのは神さまの力だけなのかもしれないと思い始めました。その間、夫の通う教会に通っていましたがなんだかスッキリ理解できず、このもどかしさを解決したいと思い日本語の教会を探しマキキ教会にたどり着きました。洗礼前の学びのクラスが終了し、ちょっと不安だけど洗礼を受けるぞ!と心に決めたその週の木曜日、子供を学校に送り,ふと車内の音楽に気を留めると「Die for you」という曲がかかっていました。

あなたのために死ぬ……。え!? どういうこと? それはつまりイエスさまが私のような神さまの反対側を向いていた、イエスさまを信じていない人のために死ぬという最大の愛を私たちにくださったてことか! とそのことが頭の中に駆け巡り涙が出てきました。そしてショッピングセンターの駐車場に駐車すると目の前に大きな虹が現れどんどん色が濃くなっていき、私は洗礼を受けても大丈夫なんだ! と心強くなりました。

イースター当日、洗礼が始まり水の中に全身が入りきると私は無になったような、不思議な感覚になりました。そして水の中から出た時、とても明るくてここは私がいた同じ場所だけれどそうではなくて、私はついに神さまの世界に来たのだと感じました。私に立ちはだかっていた何かがスッキリとなくなって安心した気持ちになりました。

私たちの今いる社会ではたくさんの真偽不明の情報や自己中心的な価値観が広がっていますが私は神さまに助けを求め、聖霊に満たされ続け歩んでいきたいです。そして神さまから頂いた愛を私の周りにいる人たちに伝え与えていきたいです。

高知からのお便り

今回、何よりの収穫は、生徒たちの変化を目の当たりにしたことです。参加生徒の中には学校の規則に不自由を感じている子や、自分に自信が持てず思い悩んでいる子もいました。その子たちがハワイの広く青い空の下で輝く笑顔を見せてくれたことは、私の胸をいっぱいにしてくれました。生徒たちが寄せた感想を見ても、楽しかったことが伺えます。これもひとえに受け入れてくださったマキキ教会のメンバーの方たちの優しさと愛情のおかげだと感じています。個人的なことを申し上げると、一番心に残っているのは日曜礼拝です。日本では月曜日から土曜日までせわしなく働き、日曜日は休息を取るのに精一杯な日々。ですが礼拝堂には心地よい風が吹き抜け、人々が集い、祈りを捧げている。ここにはなんて豊かな時間が流れているんだろうと強く胸を打たれました。

4月になり日本では新年度が始まりました。クラスの生徒たちにハワイで体験したことを話すと、誰もが興味津々で聞いてくれます。この中からまた皆さんのお世話になる生徒が現れるでしょう。皆さんが土佐塾にお越しの際は精一杯おもてなしをしてくれるでしょう。今回プログラムに参加する機会を与えてくださった神様に感謝します。皆様の健康をお祈りしています。ありがとうございました。

Rainbow Connection 2023(土佐塾中学高等学校教員 奥田江美子)

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